「思い通りにならないと、すぐに泣きわめく」
「嫌なことがあると、その場に寝転んで動かなくなる」——
そんな子どもの姿に、つい「困った子だな」と感じてしまうことはありませんか?
でも実はそれ、成長のサインかもしれません。
自己主張や癇癪(かんしゃく)は、子どもが「自分の気持ち」に気づき、それを「言葉ではなく行動で表現している」大切な時期。
ここで大事なのは、“言いなりにならずに、どう導くか”という親の対応力です。
癇癪や泣き声は「わがまま」ではなく「表現力の未熟さ」
幼児期はまだ語彙も感情の整理も発展途上です。
大人なら「空腹でイライラする」と言葉にできますが、未就学児にとっては「気持ちが不快→泣く」という直接的な手段しか持ち合わせていません。
つまり癇癪は、感情をコントロールする力(自己制御力)を育てる前段階にすぎません。
この時期に気持ちに寄り添ってもらう経験が、後の自律性につながります。
「気持ちを受け止める」ことと「言いなりになる」ことは違う
「かわいそうだから」「怒っているから」と、子どもの希望をそのまま受け入れるのは一見やさしさに見えます。
しかしそれは、子どもにとっては「泣けば思い通りになる」と誤った学習を生むリスクがあります。
例えば——
- お遊戯会の途中で「帰りたい」と泣いたとき
- 買い物中に「お菓子買って!」と泣き叫んだとき
このような場面では、「気持ちには共感するが、要求には応じない」という態度が必要です。
「泣いても変わらない」経験が、心の土台を育てる
子どもが泣いたとき、親が落ち着いて対応することで、子どもは「気持ちは受け入れられたが、行動は変えられない」と学びます。
これは、将来の集団生活や困難への耐性、社会性の基礎になります。
一度の対応がすぐに効果をもたらすわけではありませんが、積み重ねが“感情の自己調整力”として形になっていきます。
対応のポイント——“共感+方向づけ”のバランスを
泣く子どもにこう伝えてみてください:
- 「お腹が空いたよね。つらいよね。」(共感)
- 「でも、もう少しだけ頑張ってからにしようね。」(方向づけ)
- 「終わったら、おいしいおにぎりを食べよう。」(希望)
このように、気持ちを認めつつ、次の行動を提示することで、子どもは安心し、納得して前に進む力を身につけていきます。
【まとめ】
癇癪は、子どもが「今の自分」をどうにか伝えようとしているサイン。
その時こそが、親子の関係性を深め、子どもの成長を支える“最大のチャンス”です。
子どもの感情には耳を傾けて、行動の舵は大人が取る。
それが、子どもを「わがまま」ではなく、「自立した人間」へと育てる一歩となるのです。