『からすのパンやさん』で育てる5つの力―楽しいお話に問いかけを加えると、学びが“ふくらむ”絵本―


◆ おいしいパンの向こうにある、たくさんの学び

『からすのパンやさん』は、パンづくりに励むからすの家族が、工夫と努力でパン屋さんをはじめて町じゅうの人気者になっていく、かこさとしさんの名作絵本。

ただの「パンのお話」ではなく――

  • 子育てと仕事の両立
  • パンづくりへの情熱
  • 工夫と創意で問題を乗り越える姿
  • 仲間やお客さんとのつながり

など、子どもにも伝えられる**「仕事」「家族」「アイデア」「努力」**が詰まった作品です。


◆ “楽しい”の中に問いかけを加えると、考える力が育つ

この物語には、たのしさと学びが共存しています。
読み聞かせの中に質問を交えるだけで、子どもたちは物語を“じぶんごと”として考えはじめます。

「なんでパンやさんをはじめたのかな?」
「どうやって工夫して、おいしいパンをつくったんだろう?」
「いちばんすごいなと思ったパンはどれ?」
「おきゃくさんがいっぱい来たのは、どうしてだろう?」

こうした問いが、子どもたちの想像力・思考力・言語表現・社会性を自然と引き出してくれるのです。


◆ 質問が育てる5つの力

育つ力内容からすのパンやさんでの例
読解力出来事・順序・登場人物の理解「パンやさんをはじめたのは、なんで?」
思考力行動の理由・工夫・結果を考える「どうして人気が出たと思う?」
表現力自分の考えや感想を言葉にする力「いちばん食べたいパンはどれ?」
社会性働くこと・お客さんとの関係の理解「パンを売るって、どんなことかな?」
創造力自分ならどうする?を考える力「きみなら、どんなパンを作りたい?」

◆ 年齢別『からすのパンやさん』の質問例


🔸 3〜4歳向け:登場人物・出来事・パンを楽しく振り返る

絵を見ながら一緒に確認するような、楽しい質問が効果的です。

質問例ねらい
「だれがパンやさんをはじめたの?」登場キャラの認識
「からすのこどもは、なんにんいた?」出来事・家族構成の理解
「どんなパンがあった?」絵と情報のつなぎ
「どのパンがいちばんおいしそうだった?」感覚と言葉を結びつける力

🔸ポイント:「ページをめくって一緒に探そう!」と絵を使ったやりとりが◎


🔸 4〜5歳向け:行動と工夫に注目する問いを

問題解決・仕事・努力といった視点を持たせてみましょう。

質問例ねらい
「からすのパンやさんは、なんでいそがしくなったの?」行動と結果のつながり
「どうしておきゃくさんがたくさん来たの?」社会的なつながり
「どんなパンを作って工夫してた?」創意・工夫への気づき
「きみなら、どんなパンを作りたい?」創造と自己表現

🔸ポイント:「どう思う?」「どうしてそう思った?」と理由づけを求めてみましょう。


🔸 5〜6歳向け:お仕事や社会の仕組みにふれる問いへ

自分の生活と重ねたり、働くこと・売ることの意味を考えたりする機会に。

質問例ねらい
「パンやさんのしごとって、どんなことをするんだろう?」働くことの理解
「おきゃくさんに“よろこんでもらう”って、どんなこと?」他者視点
「いそがしくても、からすたちはどんなふうに協力してた?」協力・役割意識
「きみのまちにも、パンやさんある?どんなパンがあるかな?」社会とのつながり

🔸ポイント:「実際の経験」とつなげると、現実理解が深まります。


◆ 読み聞かせを「きく→かんがえる→話す」時間に

『からすのパンやさん』は、たのしい絵とにぎやかな展開で、
子どもたちが思わず引き込まれる魅力があります。

だからこそ、読み終えたあとにひとこと問いかけてみてください。

  • 「パンって、どうやってできるのかな?」
  • 「からすさんたちは、なんで人気になったんだろうね?」

この「たのしい×問いかけ」の組み合わせが、
考える習慣と、自分の考えを言う力を伸ばしてくれます。


◆ さいごに:パンの数だけ、考え方がある

絵本の中に登場する、たくさんの形・大きさ・色のパン。
それはまるで、子どもたち一人ひとりの考えや夢のようです。

  • 丸いパン、星のパン、動物のパン。
  • 甘いパン、しょっぱいパン、ふしぎなパン。

そんなたのしい世界を通して、
**“工夫すること” “はたらくこと” “よろこばれること”**を、子どもたちにやさしく伝えることができます。

次にこの絵本を読むときは、ぜひこう問いかけてみてください。

「きみがパンやさんだったら、どんなパンをつくる?」
「だれによろこんでもらいたい?」

その一言が、子どもの想像力とやさしさをふくらませる“ことばのパン”になります。