最近、未就学児を対象とした英語教育やプログラミング教育が注目を集めています。
「小さいうちからやれば、将来有利になる」
「英語が話せた方が、これからの時代に強い」
そんな期待を抱く保護者の方も多いかもしれません。
しかし、学習支援の現場で子どもたちと日々向き合う中で、私たちが強く感じるのは次のような疑問です。
「その前に、日本語の力は十分育っているだろうか?」
「“考える力”が育たないまま、英語やプログラミングを先に進めてしまっていないか?」
今回は、思考の土台としての“日本語力”の重要性を、あらためて問い直してみたいと思います。
「何を学ぶか」ばかりを追いかけていないか?
日本語による思考力や表現力がまだ未熟な段階でも、
- 英語のフレーズを暗記する
- プログラミングで簡単なゲームを作る
といった「手段の先取り」は可能です。
でもその結果、“何のためにやるのか”という目的意識や、自分の言葉で理解・表現する力が置き去りになってしまうケースが少なくありません。
これは、保護者側の認識にも原因があります。
🔸「英語やプログラミング=“武器”になる」
🔸「日本語力=“すでに身についているもの”」
という誤解のもと、思考と言語の土台が整わないまま、表面的なスキルだけを積もうとしてしまうのです。
4〜9歳は、“思考と言語の回路”をつくるゴールデンタイム
この時期に育つ力は、実に多様です。
- 語彙を増やす力
- 文の構造(主語・述語・目的語)を整理する力
- 「なぜ?どうして?」を考える力
- 話の前後関係・因果関係を理解する力
- 他人の話を聞いて、内容を要約・再構成する力
こうした能力は、すべて日本語による会話・読み聞かせ・遊びの中で自然に育ちます。
この土台がしっかりあって初めて、英語やプログラミングも“中身のある学び”になるのです。
なぜ日本語の力が軽視されるのか?
理由のひとつは、保護者自身の日本語力や言語的な思考経験の不足にあります。
- 本を読む習慣が少ない
- 自分の考えを順序立てて話す場面が少ない
- 子どもの疑問に「そういうもんだから」と片付けてしまう
こうした大人に育った場合、「言葉を使って考える・伝える」ことの本質的な意味に気づきにくくなります。
結果、「目に見える成果(英語の単語数、ゲーム作品)=学び」と錯覚し、“言葉の器”を育てる意義が見過ごされてしまうのです。
英語もプログラミングも悪ではない。問題は“順番”と“目的”
誤解のないように言えば、早期英語教育やプログラミング教育がすべて悪いわけではありません。
ただし、それは日本語での思考力や表現力がある程度育っていればの話です。
たとえば:
- 「なぜこの英文を書くのか」が理解できる
- 「どんな処理をしたいか」を言葉で整理できる
こうした“意味”が頭の中にあるからこそ、英語もプログラミングも道具として機能します。
そうでなければ、単なる暗記や操作にとどまり、考える力のない「表面的な学習」になってしまいます。
子どもの未来のために、“今”育てるべき力とは?
私たちが子どもの成長に本当に願うのは、
- 「自分で考える力」
- 「相手とやり取りできる力」
- 「説明し、説得し、納得できる力」
これらはすべて、言葉の力=日本語力から始まります。
言葉を聞き、話し、読んで、書いて、考える。
このプロセスを丁寧に繰り返すことが、将来のどんな学びにもつながっていくのです。
まとめ:日本語を育てることは、“学びの地盤”を整えること
「早いうちから英語やプログラミングをやらせなきゃ」
そんな焦りを感じている保護者の方へ、あえてこう問いかけたいのです。
「その前に、日本語で“なぜそう思ったの?”と聞かれたとき、お子さんはしっかり答えられますか?」
子どもの可能性は無限です。
でも、それを引き出すにはまず、“言葉を使って考える力”という地盤を固めることが欠かせません。
「読む・話す・聞く・書く」を、もっと身近に、もっと丁寧に。
それがすべての学びのスタート地点になるのです。
📌 学習支援サイト「学伸エンジン」
子どもたちの“ことばの力”を育てる学びを、今後も発信していきます。
https://www.tonechips.com/