言葉づかいの中でも、気づかないうちに使ってしまいがちな「ら抜き言葉」「い抜き言葉」。 最近では「会話では普通に使う」「時代の変化だから問題ない」といった声もありますが、実際の教育現場や公的文書では依然として“誤用”とされ、指導・減点の対象となっています。
本記事では、保護者や教育者が子どもに「なぜダメなのか?」をどう伝えるべきかを整理してお伝えします。
1. 「ら抜き言葉」「い抜き言葉」とは?
【ら抜き言葉】
「食べられる」「来られる」のような可能表現から「ら」を抜いてしまう言い方。
例:
- 誤用:このケーキ、食べれる?
- 正式:このケーキ、食べられる?
【い抜き言葉】
「している」「見ている」といった継続の表現から「い」を抜いた言い方。
例:
- 話し言葉:今、テレビ見てる。
- 正式:今、テレビ見ている。
これらは話し言葉では一般的になりつつありますが、作文・レポート・公的な発言では避けるべき表現とされています。
2. なぜ“誤用”として指導されるのか?
■ 文法的な根拠
「〜られる」には、以下の4つの意味があります:
- 可能(できる)
- 受け身(される)
- 尊敬(なさる)
- 自発(思わず〜してしまう)
このうち「可能」を「ら抜き」にすると、他の意味と混同される可能性があります。
■ 評価基準としての明確さ
入試、作文、新聞、放送、公文書などの場面では、文法的な整合性・正確性が重視されるため、
- 正式な形を使うこと=評価される
- 誤用とされる形を使うこと=減点対象 となります。
■ 子どもに求められるのは「使い分ける力」
日常会話での自然な表現を否定する必要はありません。しかし、
- 話し言葉と書き言葉の区別
- 公的な場と私的な場の違い
- 相手や状況によって使い分けること を教えることが、今の言語教育で求められています。
3. 「方言」「時代の変化」とどう折り合いをつける?
「ら抜き言葉」や「い抜き言葉」は、地域によっては方言的に使われてきた背景もあります。また、言葉は時代とともに変化するものでもあります。
しかし教育の場では、
- 「評価基準としての言葉」をまず教える
- 「時代とともに変わる言葉」について考える材料を与える この両方を意識して伝えることが大切です。ただし、この時代というものの長さについても配慮が必要です。最近の子供は数日単位で流行が入れ替わります。それと同様にとらえられてしまっては、理解に近づくことはできません。
4. 家庭や教室での指導のポイント
- 「ダメ!間違ってる!」ではなく、「どういう場面ではどう使うか」を教える
- 「それ、作文だったら減点されるかもね」と、TPOに即した例示
- 子どもが使った場合は、「あ、今“ら抜き”になってるね。書くときは気をつけようか」などの声かけ
- ニュースや教科書との違いに気づかせる対話
まとめ
「ら抜き」「い抜き」は、使う子どもが“悪い”のではありません。 背景には方言、家庭の会話環境、SNSやメディアなどがあり、それに自然に馴染んでいるだけです。
だからこそ、大人ができるのは、“使い分け”を意識できる指導を行うこと。 形式的な正しさより、「言葉をどう選ぶか」の感覚を育てることが、これからの国語教育には求められています。
とはいっても、社会人になって、「正しい教育を受けてきたか否か」の簡単な指標になっているのは否定できない事実です。「ら抜き言葉」も「い抜き言葉」も、使わなければならない言葉ではありません。使わない方が望ましいという事実は変わりません。都合のいい解釈をせずに、本記事の本質を見つめて、現在誤用とされている言葉を避けることも重要な教育です。
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