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言葉にできない子どもたち―説明する力が育ちにくい“環境”の話―

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◆「説明してごらん」で止まってしまう子

最近、「説明するのが苦手な子が増えている」という話を、学校現場でもよく耳にします。

先生「どうしてそう思ったの?」
子ども「……」
先生「自分の考えを説明してみよう」
子ども「わかりません」

こんなやりとり、思い当たる方も多いのではないでしょうか。

でも、ここでちょっと立ち止まって考えたいのです。
この「わかりません」は、本当に“わからない”のでしょうか?
もしかすると、「考えたことを言葉にする経験が少ない」だけかもしれません。


◆「言語化」って、そもそも何?

少し硬い言い方になりますが、「言語化(げんごか)」とは、
頭の中で感じたこと、考えたことを言葉にして表現することです。

例えば、

  • 「なんかモヤモヤするけど、どうしてだろう?」と考えてみる
  • 「これはこういう理由でうまくいかないんだ」と言ってみる
  • 「うれしい」とか「くやしい」とか、感情を言葉で伝えてみる

こうした「自分の中にあるものを外に出す力」は、ただ話が上手というだけではなく、思考力・読解力・対話力・問題解決力など、いろんな力の土台になります。

でもこの「言語化の力」は、自然に身につくわけではありません。
“言葉にしてみる”経験の積み重ねがあって、少しずつ育っていくものです。


◆ 言葉にする機会、減っていませんか?

ところが、今の子どもたちを取り巻く環境では、その「言葉にしてみる」機会がずいぶん減っているようにも見えます。いくつか、心当たりはありませんか?

◎ 一人でできる時間が増えた

スマホ、ゲーム、YouTube…。
ひとりで静かに楽しめるコンテンツが山ほどある時代です。
それはそれでいいことなのですが、「誰かと話す」「自分の考えを口にする」場面が、どうしても減ってしまいます。

昔なら、テレビを家族みんなで見ながら「これどう思う?」なんて会話が生まれていたのが、今はそれぞれの画面を見て静かに過ごすことも珍しくありません。

◎ 会話が「短く」「早く」なっている

LINEやチャットなど、現代のやりとりは「短く、すぐ伝える」が基本。
絵文字やスタンプで感情を伝えることもできますし、相手の話を丁寧に聞いて深掘りするような時間は、なかなか取られにくくなっています。

会話は成立しているけど、「自分の気持ちを整理して言葉にする」練習にはなっていない、という場面も多いのです。


◆ 学校でも説明する場が足りていない?

もちろん、学校でも「説明する力」は大切にされています。
ですが、実際の授業では「正解を早く出す」ことが優先されがちで、ゆっくり考えを言葉にする時間は意外と少ないのが現実です。

「どうしてそう思ったの?」と聞かれても、答え方を知らない。
あるいは、間違えたら恥ずかしいと思って口を閉ざす。
結果として、「わかりません」で終わってしまうのです。


◆「言語化できない子」に、私たちは何ができる?

では、子どもたちが少しずつでも「言葉にすること」に慣れていくには、どうすればいいのでしょうか?
すぐに変化は見られないかもしれませんが、こんな関わりがヒントになるかもしれません。

◎「正解」より「考えた過程」を聞く

「どうしてそう書いたの?」
「どんなことを思ってた?」
「なにかヒントはあった?」

こんなふうに、「どうやってそこにたどり着いたのか」を聞いてあげると、子どもは答えやすくなります。
正解かどうかよりも、「自分なりに考えた道すじ」を大人が認めてくれることで、「言ってみようかな」という気持ちが芽生えます。

◎「言葉にしてみる」遊びを増やす

例えば、こんな家庭での会話はいかがでしょう?

  • おやつの味を「一言で言うと?」と表現してみる
  • 天気を見て「今日はどんな日になりそう?」と予想してみる
  • テレビの感想を「○○だから△△だと思った」と理由をつけて話してみる

遊びの中に「ことばにする」体験を織り交ぜることで、自然と語彙も増え、考えを整える力も育ちます。

◎「聞く力」を育てる

実は、「うまく話せない子」は、「他の人の話を聞いていない」のではなく、「どう聞いたらいいかわからない」ことも多いのです。

  • 誰かの説明を聞いて、「どこがわかりやすかった?」と聞いてみる
  • 「この人は、どんな順番で話してた?」と順序に注目させてみる

こうした「聞く力」のトレーニングも、「話す力」を伸ばす土台になります。


◆ さいごに:言葉は、思考の器

「説明ができない子」と聞くと、つい「考えていないのでは?」と思ってしまいそうになります。
でも、多くの場合は「考えているけど、うまく言葉にできない」だけなのです。

言葉は、思考の器(うつわ)です。
器がなければ、水(考え)も形を持てません。
でも器の形や大きさは、経験によって少しずつ育っていくものです。

「どうしてそう思ったの?」「それって、どんなこと?」
たった一つの問いかけが、子どもたちの“思考の器”を少しずつ広げてくれるかもしれません。

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保護者・教育者向け子供とのかかわり方
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