【はじめに】
「体調が悪いから休みたい」「トイレに行きたい」「今日は無理」。
言葉ではそう説明するけれど、実際には“ただやりたくない”だけ。
子どもがそんな“言い訳”を使って自分の苦手や面倒から逃げようとする場面は、学校でも家庭でも少なくありません。
一見ささいな行動のようですが、これは子どもが「正直に気持ちを表す」ことを避けているサインです。
そして、それを助長してしまう背景には、大人──特に保護者の関わり方が大きく影響しています。
【ごまかしは、ただの“ウソ”ではない】
子どもが「やりたくない」ときに、そのまま「やりたくない」と言える子は意外に少ないものです。
代わりに、“それらしい理由”を使って逃げ道をつくろうとします。
・「お腹が痛い」
・「友達とトラブルがあった」
・「今日は気分が悪い」
その中に本当の体調不良や悩みも混じっているため、大人には見抜きにくいのが現実です。
しかし問題は、「本音を隠して“らしいこと”を言えば許される」と、子どもが学習してしまうことです。
これは単なる“ウソ”とは違います。
**「自分の気持ちに向き合わず、別の理由で自分をごまかす行動」**なのです。
【“騙す”ことで自分を守る構造】
子どもにとって、“騙す”という行動は自己防衛の一つです。
注意されたくない。評価されたくない。できないことを知られたくない。
それらの不安や恐れから、本当の理由を伝えることを避けます。
結果として、自分の「苦手」「困っていること」「嫌なこと」に気づかないふりを続け、自己理解が育たないままになってしまいます。
【その“逃げ道”を、誰が作っているのか?】
子どもが“ごまかす”ようになる背景には、家庭での親の接し方が大きく関わっています。
たとえば…
- 子どもが弱音を吐いたときに、否定・叱責していないか?
- 「頑張ればできるでしょ」「サボりでしょ」と決めつけていないか?
- 子どもの本音を受け止める余裕が、大人の側にあるか?
こうした対応が続くと、子どもは「本当のことは言わないほうがいい」と無意識に感じ取ります。
そして、**“叱られないウソ”**を使ってその場をやりすごすようになるのです。
つまり、「ごまかすことを覚えた子ども」は、ごまかさなければならない家庭環境の中で育っているとも言えます。
【子どもが「正直になる」には安全な場が必要】
では、どうすれば子どもは自分に正直になれるのでしょうか?
それは、「正直に言っても大丈夫だ」と実感できる経験を積むことです。
- 「やりたくない」と言ったときに、「どうして?」と対話をする
- 本音を語ったことに対して、「ありがとう」と返す
- 嘘やごまかしに気づいても、一度は受け止めて背景を探る
こうした関わりが積み重なることで、子どもは徐々に「隠さなくてもいい」と思えるようになります。
それが、自分と向き合う力=自己理解の出発点となります。
【まとめ】
子どもが“騙す”ような行動を取るとき、私たちはつい「ズルい」「サボり」と片付けてしまいがちです。
けれど、その背景には、自分の本音を安心して伝えられない環境や関係性があります。
子どもが自分を偽らなくてもよくなるために、
まずは大人が「本音を受け止める」姿勢を持つこと。
子どもの“言い訳”に反応する前に、その裏側にある「伝えられなかった気持ち」に目を向けること。
それが、子どもを“ごまかしの習性”から救い出す第一歩になるはずです。