『100万回生きたねこ』で育てる5つの力―生きること・愛することを問いかける、深くて優しい読み聞かせ―


◆ この絵本が“人生”を考えるきっかけになる

『100万回生きたねこ』は、一度読んだら忘れられない絵本です。
100万人の飼い主のもとで何度も生き返ったねこ。
でも、自分の死を悲しんでくれる人はいなかった。
そんなねこが、野良ねことして生きていたとき――
1ぴきの白いねこと出会い、本当の「いのち」と「愛」を知っていきます。

「なんで、ねこは100万回も生きたのかな?」
「白いねこと出会って、なにが変わったの?」
「自分が死んだことより、白いねこが死んだときの方が、悲しかったのはなぜ?」

この作品は、大人にとっても「読むたびに新しい発見がある絵本」です。
だからこそ、子どもたちにも**“問いかけながら読む”ことで、感情・価値観・ことばの力が大きく育ちます。**


◆ この絵本だからこそ、問いが効く

『100万回生きたねこ』は、ただの「ねこの話」ではありません。

  • 死や生への向き合い方
  • 他人の目ではなく、自分の生き方を選ぶこと
  • 誰かを本気で大切に思う気持ち

こうした“人生の本質”を、やさしくも鋭く問いかけてきます。
だからこそ、子どもと一緒に考える価値があるのです。


◆ 質問が育てる5つの力

育つ力内容100万回生きたねこでの例
感情理解登場人物や自分の気持ちを想像する力「ねこはどうして泣かなかったの?」
読解力展開・象徴・物語の構造の理解「ねこが死ぬたびに、何が起こった?」
思考力抽象的なテーマ(命・愛・死)を考える力「ほんとうに生きたって、どういうこと?」
自己理解自分の価値観・考え方を見つめる力「きみにとって“大切なこと”ってなに?」
表現力深い気持ちを自分の言葉で表現する力「このお話を1文で説明するとしたら?」

◆ 年齢別『100万回生きたねこ』の質問例


🔸 5〜6歳向け:できごとの流れと感情をゆっくりとたどる

この作品は少し難しい内容も含むため、年長さんからの読み聞かせが適しています。

質問例ねらい
「ねこは、何回生きたの?」数字・構造の把握
「どんな人たちに飼われた?」記憶と整理
「なにをしても、ねこは泣かなかったのはどうして?」感情の認識
「白いねこが死んだとき、ねこはどうした?」感情の変化

🔸ポイント:「どんな顔してた?」「どう思ったかな?」と表情や気持ちに注目させましょう。


🔸 小学校低学年向け:感情・関係性・行動の意味を深める

質問例ねらい
「白いねこと出会って、ねこはどう変わったと思う?」関係性の変化の理解
「“ほんとうに生きた”って、どういう意味だと思う?」抽象表現への気づき
「ねこは、どんなときに幸せだったと思う?」感情の考察
「さいごに、ねこが泣いたのはなぜ?」感情の深まり・共感

🔸ポイント:「きみがねこだったら、どうした?」という投げかけで自分ごとに引き寄せましょう。


🔸 小学校中学年〜:自分の生き方・価値観へと広げる

質問例ねらい
「ねこはなぜ“自分が好きだった”のに、最初は幸せじゃなかったのかな?」自己中心性と他者理解のバランス
「“生きる”って、どういうことだと思う?」抽象的テーマの探究
「“誰かのために泣ける”って、どういう気持ち?」思いやりと愛の深まり
「この話でいちばん心に残った場面は?」印象と感情の表現

🔸ポイント:「正解のない問い」を共有し、「いろんな考えがあっていい」と伝えることが大切です。


◆ 読み聞かせは、“深いことば”と出会う場に

『100万回生きたねこ』は、ことばのリズムが美しく、短い文章でも強く心を打つ絵本です。

  • くり返される「死んだけど、ねこは泣かなかった」
  • 最後の「もう、ねこは生きかえらなかった」

この短いことばの中に、命の意味・生きること・愛することが凝縮されています。

子どもがこの物語に出会ったとき、
問いかけと対話を通して、「言葉にできない気持ち」を少しずつ言葉にする体験ができるのです。


◆ さいごに:読むたびに“自分”がうつる鏡のような絵本

『100万回生きたねこ』は、読み手の年齢や経験によって受け取り方が大きく変わる作品です。
子どもが読めば「友情や愛の発見」、
大人が読めば「生き方や喪失への向き合い方」。

でも、問いかけを加えることで、
どんな年齢の子どもにも**「今の自分」と向き合わせてくれる鏡のような絵本**になります。

ぜひ、次にこの物語を読むときは、こう問いかけてみてください。

「ねこが“ほんとうに生きた”って、どういうことだと思う?」
「きみが“大切にしているもの”って、なに?」

その一言が、子どもにとっての「いのち」と「ことば」をつなぐきっかけになるかもしれません。