「小さいうちからスマホなんてけしからん」
「絵本を読んでさえいれば、ことばは育つ」
世間では、子どもの発達にまつわる情報があふれていますが、本当に大切なことは、まだあまり語られていません。
それは、「子どもが見た・聞いた内容をどう消化するか」です。どんなに良質な動画でも、素晴らしい絵本でも、子どもがそれをただ受け取るだけでは意味がありません。
子どもが「思考を整理し、自分のことばで表現する機会」こそが、成長に欠かせないのです。
スマホや絵本は「情報源」でしかない
スマホ動画も絵本も、いずれも外からのインプットです。
たとえば、面白いアニメを見たり、感動的なお話を読んでも、子どもがそれを「心にとどめる」にはアウトプットの場が必要です。
つまり、「どうだった?」「どこが好きだった?」という問いかけや、「それってどういうこと?」と掘り下げていく会話を通じて、初めて意味のある学びになるのです。
「見せる」だけで終わる危険性——思考停止を生む
特に未就学児や小学校低学年のうちは、まだ情報を処理する力が未熟です。
この段階でただ映像を見せ続けたり、黙って読み聞かせるだけでは、子どもは「理解した気になる」だけで終わってしまうこともあります。
言葉の理解や論理の発達には、「言葉にする」「説明する」「共感される」というプロセスが不可欠です。出力がないインプットは、単なる“受け身”であり、成長にはつながりにくいのです。
「対話」のない育児が生む沈黙と孤立
たとえば、スマホ動画をたくさん見ていても、それについて親が何も聞かなければ、子どもは次第に「話さなくてもいい」と思うようになります。
同様に、絵本を毎晩読んでも「どう思った?」「誰が好き?」などの問いがなければ、自分の気持ちを言葉にする機会が奪われていきます。
言語は感情や思考を整えるツールです。それを使う機会を与えなければ、心の整理ができず、不安や混乱を抱えやすい子どもになってしまう可能性もあります。
「問いかける習慣」がことばと心を育てる
では、どうすればいいのか?それはたったひとつ、「問いかけること」です。
- 「今見てたの、どんな話だった?」
- 「そのキャラクター、どう思った?」
- 「お話のつづき、○○だったらどうするかな?」
こうした声かけは、子どもにとって「自分の中に気持ちや考えがある」ことに気づかせ、それを言葉にする力=表現力や論理性を養う土台になります。
まとめ
スマホも絵本も、うまく使えば素晴らしい教材です。しかし、それをただ見せる・読むだけでは、かえって思考力や表現力の発達を妨げることにもなりかねません。
大事なのは、「何を見せるか」よりも「そのあと、どう会話するか」。
子どもが自分の感じたことを話し、それに耳を傾けてもらう経験こそが、思考と言語の成長を支えるのです。