絵本の時間が変わる!―質問しながら読み聞かせるだけで、子どもの力がぐんぐん育つ―

◆ ただ読むだけじゃ、もったいない

「絵本の読み聞かせは、子どもにいい」
そんなことは、今や多くの保護者や先生が知っています。
でも実は、その絵本の時間を“ちょっとした質問”でグッと深められることは、あまり知られていません。

たとえば――

「あれ?ももたろうは、おばあさんに何をもらったんだっけ?」
「いぬときじと、あと誰が仲間になったんだっけ?」
「シンデレラは、なにを忘れて帰っちゃったんだろう?」
「なんで、一番上の子ブタはわらの家をつくったのかな?」

こんなふうに、ただ読み進めるだけでなく、“質問をはさみながら読む”
たったそれだけで、子どもの集中力も、記憶力も、読解力も、目に見えて変わってきます。


◆ 質問がもたらす、5つの力

では、読み聞かせに“質問”を加えると、どんな力が育つのでしょうか?
ここでは、特に大切な5つの力をご紹介します。

① 読解力:物語を「理解する力」

質問されると、子どもは「ちゃんと聞いてないと答えられない」ことに気づきます。
「誰が?」「何を?」「どうした?」という基本的な構造を意識しながら聞くようになるのです。

たとえば、

「おばあさんがくれたのは何だった?」
という質問に対して、

「きびだんご!」

と答えられたとき、子どもは物語の中の情報を自分なりに整理し、覚え、再生しています。
これは読解力の第一歩です。


② 思考力:「なぜ?どうして?」と考える力

「なんでオオカミはレンガの家を壊せなかったのかな?」
「なんでカチカチ山で、うさぎはあんなことしたんだろうね?」

こんな“理由を問う質問”を投げかけると、子どもは登場人物の気持ちや因果関係に注目し始めます。

理由を自分で考える、というプロセスは、小学校以降の論理的思考の土台となります。


③ 説明力:思ったことを「言葉にする力」

質問に対して答えようとすると、子どもは自分の頭の中を「言葉」にしようとします。

最初は、「うーん……なんでだろう……」と言葉が詰まるかもしれません。
でも、くり返すうちに、

「えーとね、たぶん、にげるときに、いそいだから!」

というように、自分の考えを言葉で伝える習慣がついてきます。

これは、将来的に作文や会話、ディスカッション力に直結する力です。


④ 国語力:語彙と文の組み立て力

質問を受けると、子どもは「正しく伝えるには、どんな言葉を選べばいいか」を考えるようになります。

質問に応じて、形容詞(おいしい・かなしい)、副詞(すごく・とても)、接続詞(だから・でも)など、いろんな言葉を使おうとし始めます。

これが自然な語彙力の増加や、文の構成力を支えます。


⑤ 集中力:話を追う力

「いつ質問がくるかわからない」という状況そのものが、集中力を高めます。
ゲーム感覚で質問を受けるようになると、子どもは耳と心を物語に全集中

読み聞かせの時間が、ただの“お話タイム”から、**頭と心をフル回転させる“学びの時間”**に変わっていきます。


◆ 質問は、年齢に応じて変えてあげよう

子どもの年齢や発達に合わせて、質問のタイプを少し変えてあげると、より効果的です。

年齢質問の例ねらい
3〜4歳「これは誰?」「何色だった?」単語認識・記憶・聞く姿勢
4〜5歳「何をしてた?」「次はどうなると思う?」簡単な要約・予測・つなぎ読み
5〜6歳「どうしてそうなった?」「なんでそう思う?」因果関係・感情理解・思考表現

ポイントは、「正解を求めすぎないこと」。
子どもが自由に答えたり、間違えたりすることも含めて、“話すこと”自体を楽しませることが一番大切です。


◆ 質問には、こんな効果も!

ちょっと意外かもしれませんが、
読み聞かせに質問を加えると「話を聞くのが苦手な子」も変わります。

質問をはさむことで、“ただ聞いているだけ”だった時間が、**「自分の番がある時間」**になります。
自分の考えを求められると、人はぐっと話に引き込まれます。

その体験の積み重ねが、「聞く力」「話す力」両方を育ててくれるのです。


◆ おわりに:読むことは、対話のはじまり

絵本の読み聞かせは、親子のあたたかい時間。
そこに**ちょっとした「問いかけ」**を加えるだけで、
読解力・思考力・説明力・集中力――いろんな力が、自然と育っていきます。

「なんでだろうね?」
「どう思った?」
「もし○○だったらどうなるかな?」

たった一つの質問が、
子どもの“ことばの世界”を、ぐんと広げてくれるかもしれません。