読解練習:沈黙は、やさしさか?【Lv.13|高3以上】
教室で友人がからかわれていた。明らかに笑いではなく、少し傷つけるような空気だった。
でも、本人は苦笑いをしながら、「大丈夫」と言っていた。
周りは皆、何も言わずに見ていた。私もその一人だった。
「やめなよ」と言うこともできたかもしれない。でも、空気を壊すのが怖かった。
そのとき私は、「何も言わないこと」が一番やさしい選択だと思い込もうとしていた。
でも、本当のやさしさとは、どこにあったのだろうか。
沈黙は、時に守ることでもあり、逃げることでもある。
あのとき、私の沈黙は、どちらだったのか。いまでも答えは出ていない。
◆ 問題
- 筆者は、友人がからかわれている状況をどう感じていましたか?
- 筆者は、なぜその場で何も言わなかったのでしょうか?
- 「沈黙はやさしさか?」という問いに対して、あなたはどう考えますか?
- あなた自身が「何も言わなかったこと」を後悔した経験、または「沈黙でよかった」と思った経験があれば、書いてみましょう。
◆ ポイント
- やさしさが「行動」ではなく「抑制」に現れることがある、という構造的理解を促す。
- 「言わないこと」が守ることにも、逃避にもなり得る両義性に触れる。
- 個人の行動だけでなく、「場」や「空気」の力を読み取る読解力を鍛える。