◆ なぜ、つるは飛び立ってしまったのか?
ある日、おじいさんが助けた鶴が女の人の姿になって現れ、「おかえしをしたい」と言ってくる。
織物を織るけれど、「けっして部屋をのぞかないでください」と言われる――
でも、のぞいてしまった。
そして鶴は、飛び立っていった――
『つるの恩がえし』は、子どもたちに「命を助けること」「感謝を返すこと」「約束を守ること」「人を思う気持ち」など、
さまざまな“人として大切なこと”を伝えてくれる昔ばなしです。
◆ 「問いかけながら読む」ことで、道徳も言葉も育つ
『つるの恩がえし』には、以下のような深いテーマが含まれています。
- 命と恩返し
- 他者のために働く姿
- 「見てはいけない」秘密と好奇心
- 約束と破った結果
- 信頼と別れ
だからこそ、ただ読むのではなく、質問を交えながら読めば、読解力・感情理解・道徳観・思考力が一度に育ちます。
◆ この絵本で育てられる5つの力
育つ力 | 内容 | つるの恩がえしでの例 |
---|---|---|
読解力 | 物語の展開・人物の関係を理解する力 | 「女の人は、どうして来たの?」 |
感情理解 | 登場人物の心の動きを考える力 | 「女の人は、どんな気持ちで織っていたのかな?」 |
思考力 | 行動とその理由・結果を考える力 | 「のぞいてしまったのは、なぜだろう?」 |
道徳性 | 「約束」や「感謝」などの価値観を考える力 | 「鶴は、なぜ秘密を守ってほしかったの?」 |
表現力 | 自分の考えを言葉で伝える力 | 「つるが最後に飛び立ったとき、どう思った?」 |
◆ 年齢別『つるの恩がえし』の質問例
🔸 4〜5歳向け:できごとと気持ちをゆっくりたどろう
この年齢では、登場人物や場面の理解を深めながら、少しずつ「気持ち」に注目させます。
質問例 | ねらい |
---|---|
「おじいさんは、なにを助けたの?」 | 出来事の理解 |
「女の人は、なにをしたの?」 | 行動の整理 |
「どうして“みないでください”って言ったのかな?」 | 願いの理解 |
「さいご、つるはどうなった?」 | 結末の記憶 |
🔸ポイント:「どう思う?」「どうしてかな?」の問いかけで考えの幅を少し広げてみましょう。
🔸 5〜6歳向け:約束・感情・行動の意味にせまる
物語の中での「なぜ?」をたくさん投げかけることで、思考と表現力を刺激できます。
質問例 | ねらい |
---|---|
「つるは、どうして女の人の姿になったの?」 | 意図の理解 |
「なぜ、“みないで”って言ったと思う?」 | 信頼・配慮の理解 |
「おじいさんは、どうしてのぞいてしまったのかな?」 | 好奇心と人間の弱さへの気づき |
「つるは飛んでいって、うれしかった?かなしかった?」 | 感情の想像と共感 |
🔸ポイント:「もしきみが鶴だったら?」と自己投影させてみましょう。
🔸 小学校低学年向け:行動の選択と“本当の思いやり”を考える
より深い問いかけを通して、善意・欲望・感情・信頼といったテーマに触れることができます。
質問例 | ねらい |
---|---|
「鶴はなぜ自分の羽で布を織ったのかな?」 | 愛・自己犠牲の理解 |
「のぞいてしまったことは、悪いことだった?」 | 倫理的判断の育成 |
「つるは、恩返しをしにきたけど、そのあともいたよね。どうして?」 | 関係性・感情の考察 |
「このお話の“たいせつなこと”って、なにだった?」 | 教訓の発見 |
🔸ポイント:「ひとつの答え」に縛られず、自由に考えを言わせてあげましょう。
◆ 読み聞かせで“問い”を共有すると、物語が心に残る
『つるの恩がえし』は、「悲しいお話」として終わらせてしまうには惜しい、
深い感情や教訓を含んだ昔ばなしです。
読み終えたあとに問いかけてみることで、
「なぜ?」「どうして?」「きみならどうする?」という会話が生まれ、
物語が“自分の経験”として心に刻まれていきます。
◆ さいごに:「見ないで」と言われたら、きみはどうする?
“見てはいけない”という約束。
“助けてくれたことへの感謝”。
“愛情ゆえに、傷ついて飛び立つ別れ”。
この物語は、たった一つの出来事から、命・関係・信頼・別れ・人生の奥深さを子どもたちに伝えてくれます。
ぜひ、読み終わったあとにこう問いかけてください。
「きみが“おじいさん”だったら、のぞいてた?」
「なんで“約束”って、だいじなのかな?」
その一言が、子どもの心に“優しさの種”をまくことになるかもしれません。