🔴【1】中学進学時や中3時点で「日本語が不自由な状態」の場合、どうするか?
❶「理屈を理解できない子」に理屈で教えない
このレベルになると、“論理的な理解”を前提にした指導はほぼ成立しません。
例えば:
- 「ここで『なぜなら』を使うのは、理由を説明する接続詞だから」
- 「この問いは“具体→抽象”の型になっているから答えにくいんだよ」
→ こうした言語メタ認知は通用せず、子どもはますます萎縮するだけです。
➡ 代替策:感覚ベースの模倣・反復・実演
- 「先生が書いた文と同じようにやってみよう」
- 「この順番で書けば正解になる。これをまず真似しよう」
- 「声に出して読んで、意味がつかめるまで繰り返そう」
👉 “再現性のある行動”にフォーカスし、理屈は後回し
👉 文章問題や作文も、「型をなぞる」ことから入ります。
❷ 問題への反応力を「質問→反応訓練」で鍛える
理屈は理解できなくても、問われたときに“こう答える”という反応を身体化する訓練は可能です。
- 「これは“何についての話か”を答える問題。だから最初の段落を読む」
- 「“どうして?”と聞かれたら、答え方は『〜から』『〜ため』で始める」
→ これを身体的な“型”として刷り込む。
英語の定型表現学習と似た方法です。
個別の理解を求めるのではなく、「問われた型と答えの型を結びつける訓練」によって、最低限の対応力を確保します。
❸ “学習”ではなく“生活に必要な認知”を中心に据える
高校受験に際しては、全員が高次な思考力を求められるわけではありません。
- 最低限の読解力(例:指示・説明書を読む)
- 金銭感覚、数量処理、道順の理解
- 社会生活で必要な手続きの理解(市役所の案内、ATMなど)
👉 「何が分からなくて、どんな生活困難が起きそうか」を軸に、
高校進学後の支援対象の選定や、保護者との連携を早期に進めることが必要です。
🟢【2】では、いつから何をしていれば防げたのか?
この質問は、教育と子育ての最も核心的なテーマに触れています。
❶ 小学校低学年までが“ことばの土台”の決定期
- 4歳〜9歳頃は、「語彙」「構文」「文脈理解」「音声処理」「順序処理」などが爆発的に育つ時期です。
- この時期に家庭での会話・読み聞かせ・語彙拡張が不足すると、 “意味が分からない日本語”が身についたまま学齢期を迎えてしまいます。
➡ 予防として必要なのは:
- 絵本を読んで「どんな話だった?」と要約させる習慣
- 日常会話の中で「なぜそう思ったの?」と問う対話
- 「自分の言葉で説明する」機会を意図的に増やすこと
👉 これらがないまま中学に進むと、「先生の言ってることが分からない」子になる確率が上がります。
❷ “学力”以前の「言語生活の環境差」が決定的になる
- 語彙の差は、読書量×家庭の語りかけ×対話型教育の有無で決まります。
- 結果、小5〜中1あたりで**「日本語の基盤差」が表面化**します。
➡ この段階で“語彙獲得訓練”や“文章を読む訓練”を入れれば、追いつける可能性はあります。
ただし、中3以降では、定着には年単位の時間が必要になることが多く、現実的には「学習内容の最適化」や「生活スキルの強化」に切り替えるべきタイミングです。
🟡【まとめ】では、どうするのが正解なのか?
- 中学生での“日本語の困難”には、理屈ではなく模倣と反復で対応
- 思考を求める前に、「行動としての学習型」を刷り込む支援が必要
- 小学校低学年までの“言語的生活環境”がカギ。読書・対話・説明経験の量が将来を分ける
- 中3以降では、無理な受験指導よりも、“社会生活の基礎的言語対応力”を鍛える選択も重要