“話せない”子どもたちの背景と対処法 〜保護者ができる支援とは〜

はじめに

家庭や学校で、「ちゃんと話して」と言われても、うまく言葉がつながらない子どもたちがいます。 「ノート…」「らくがき…」「いや…」といった断片的な言葉でしか返せない。これは単なる口下手や性格の問題ではありません。

このような子どもは、思考の整理・言語表現・自己理解の力が育ちきっていない可能性があります。 今回は、そんな子どもたちの状況と、それに対して保護者ができる関わり方について、2つの視点でまとめました。

 言葉にできない子どもたち―説明する力が育ちにくい“環境”の話―

 


【1】小学校5年生以上で「話せない」子どもへの対応法

● 1. 文で話す練習を家庭で繰り返す

  • 単語だけの返答はNGにする。
    • ×「うん」「違う」「ノート」「落書き」
    • ○「落書きをしていました」「先生の話を聞かずに描いてしまいました」など
  • 「“何をどうしたか”を全部言ってごらん」と具体的に促す。

● 2. 思考の構造を整理する声かけ

  • 「なぜそう思ったの?」「どこで何が起こったの?」「何のためにしたの?」など、因果関係や目的を意識した質問を繰り返す。
  • 5W1Hのフレーム(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どうした)を日常会話で活用する。

● 3. 書いてから話す習慣をつける

  • 話す前に一度「メモに書く」→それをもとに話す。
  • 書くことで、文の構造・語順・情報の整理ができ、話す力にもつながる。

【2】未就学児からできる「話せない子」にしないための関わり方

● 1. 親が「実況中継」してあげる

  • 子どもが遊んでいるときに、「ブロックを積んでるね」「高いところに赤いブロックを置いたね」など、子どもの行動を言葉で説明してあげる。
  • 言語と行動をつなぐことで、文としての思考の土台ができる。

● 2. 絵本を読み聞かせ+問いかけ

  • 物語を読むだけでなく、「誰が悲しかったの?」「なんでそうなったの?」と話の流れ・理由・感情に触れる問いを添える。
  • 登場人物の行動と結果をつなぐ力が、文章の理解力=話す力にもつながる。

● 3. 自分の言葉で話す経験を増やす

  • 「言ってごらん」と促すだけでなく、「どんな気持ち?」「どうしたかったの?」と本人の中にある思考を引き出す
  • 文を組み立てる経験の積み重ねが、将来の自己表現力の差になる。

【まとめ】

「話がまとまらない」「返答が単語ばかり」という子どもには、思考と言語の連動の未発達があります。

保護者としては、

  • 小学生以降は「話す練習」を意識的に促す
  • 未就学児には「言葉で状況を整理する」習慣をつける ことが、もっとも効果的な支援です。

“話せない”という状態のまま放置することは、自己理解や学力の発達にも影響します。

「なぜ?」「どうして?」「どう思う?」 日常の中で繰り返す、この小さな問いが、子どもの未来を変えていく大きな一歩になります。

保護者・教育者向け子供とのかかわり方