読解練習:問い続ける意味【Lv.15|高3以上】
「答えが出ないなら、考えても無駄じゃない?」
哲学の授業で誰かがそうつぶやいたとき、教室に一瞬の沈黙が流れた。
すずき先生は黒板に「生きる意味って何だろう」と大きく書いてから言った。「この問いに“正解”があると、本気で思ってる人は、たぶんいない。でも、だからこそ考える価値があるんです。」
「考えることで、自分の立ち位置が見えるようになる。問いが自分を育てることもあるんですよ」と先生は続けた。
その日から私は、「なぜ勉強するのか」「なぜ他人と関わるのか」「なぜ、自分は自分なのか」と、明確な答えのない問いを心の中で少しずつ集めるようになった。
答えが出ない問いは、不安でもある。でも、答えが出ないからこそ、その問いが「今の自分」をつくってくれている気がする。
◆ 問題
- すずき先生は、「正解がない問い」にどんな価値があると考えていましたか?
- 「問いが自分を育てる」とは、どういう意味だと思いますか?
- 筆者が集めるようになった問いには、どんな共通点がありますか?
- あなたが「今も答えが出ていない」と感じている問いがあれば、その問いと、それについて考えたことを書いてください。
◆ 指導のヒント
- “問い”とは答えを得る手段だけでなく、“思考を育てる装置”であることに気づかせる。
- 「答えがない=価値がない」という前提を疑わせる教材として最適。
- 哲学的対話・探究学習の導入に、個人の内省を深める素材として活用可能。