読解練習:沈黙の責任【Lv.13|高3以上】
クラスでいじめのようなことが起きていると気づいたのは、かなり前だった。
誰かがからかわれている場面、ノートが勝手に隠されていたこと、悪口が回っていること。それを見たとき、かえでは心の中で「よくない」と思った。
でも、声には出さなかった。
言えば、自分も何かされるかもしれないし、うまく伝えられる自信もなかった。
ある日、その子が学校に来なくなったとき、かえでは「何もしていない自分が関係ないとは言えない」と感じた。
「何も言わなかった」ことが、誰かを追いつめてしまったかもしれない。
言葉を発することだけでなく、沈黙にも意味があると、かえでは思い知らされた。
◆ 問題
- かえでは、どのような場面に対して「よくない」と思っていましたか?
- かえではなぜ、そのとき声をあげなかったのでしょうか?
- 「沈黙にも意味がある」とは、どのような意味でしょうか? あなたなりに考えて書いてください。
- この話を読んで、あなた自身が「見て見ぬふり」をした経験や、それに対する思いがあれば書いてみましょう。
◆ 指導のヒント
- 発言しない=中立 ではなく、「関与しないことが加担になる」可能性を考察させる。
- 勇気の問題ではなく、「沈黙も選択のひとつ」として言語化させる。
- 「見ない」「言わない」ことが、時に倫理的判断と関わることを深く考えさせる。