読解練習:信じられる人、信じられない社会【Lv.15|高3以上】
ある日、電車で席をゆずった人が「ありがとう」と言わずに立ち去った。
「なんだ、感じ悪いな」と思ったが、よく見るとその人は足をひきずっていた。
もしかすると、お礼を言う余裕すらなかったのかもしれない。
ニュースを見れば、詐欺や裏切り、隠ぺいや嘘が毎日のように流れている。
知らない人を疑うのは「身を守るため」とされ、知らない人を信じるのは「甘い」とされる社会。
それでも、目の前の誰かを信じられるかどうかは、その人の“表情”や“沈黙”にさえ、私たちは意味を感じている。
不信が当然の社会の中で、それでも“信じたい”と思える誰かに出会ったとき——私たちはその感覚をどう受け止めるべきなのだろう。
◆ 問題
- 筆者は、最初どのような気持ちを抱きましたか?そして、後からどのように考え直しましたか?
- 「信じること」が難しい社会の特徴は、どのように描かれていますか?
- それでも「信じたい」と思う気持ちは、どこから生まれるとあなたは考えますか?
- あなたが「この人は信じられる」と思った経験について書き、それがなぜそう感じたのか考えてみましょう。
◆ 指導のヒント
- 不信が“社会的常識”とされがちな現代において、個人の信頼感覚を丁寧にすくい上げさせる。
- 信じる行為は「理屈」ではなく、「経験」「直感」「関係」に根差すものであると気づかせる。
- 情報化・匿名化が進む中で、「信頼とは何か?」を自分の言葉で定義する訓練にもなる。