序章 きっかけ
平成27年6月に閣議決定された「日本再興戦略2015」において、2020年に男性の育児休業取得率13%の目標が明記されましたが、それよりも数年前の平成25年度(2013年度)初旬に、会社の年次別研修において「女性活躍推進につながる取り組みをグループワークを通して考えてください。最後には発表をしてもらいます」なんて課題を投げつけられました。
ここで4人のグループを組み、たどり着いた取り組みが「男性の育児休業取得促進」であり、最後の発表においては高評価を受け、社内のある程度上の所まで話が進み、数か月後には取り組みがが採用され、会社を挙げての取り組みとなりました。
女性活躍推進というテーマに対して、考えを進めていく中で、問題があまりにも多岐にわたっており、それらの枝の手入れをする方法もあったなかで、問題の幹を探し当てることを目的に話し合いを進めていったので、グループ内での意見衝突もありました。途中アンケート調査を実施したり、関係する部署の担当者等にヒアリングを行うこともありました。
最終的には心の底から満足できる成果物を作り上げることができたうえに、会社を挙げての取り組みとして採用されたことはありがたいことです。
女性活躍推進
女性活躍推進というテーマを投げられてから、男性育休取得推進にたどりつくまでの経過を簡単に紹介します。
日本の社会全体的なことで言えば、国会議員や内閣に占める女性の割合や、公官庁の女性の割合が低く、世界的にみても日本の経済社会における女性の活躍の程度は高いとは言えない状況です。
女性が活躍していないという話ではなく、活躍している女性が少ないことや、機械が均等になっていないと言えるかもしれません。
2021年における「世界男女平等ランキング」では対象となっている153か国のうちワースト2となっています。堂々の152位です。なかなか不思議な採点基準なので、納得できないことも少々ありますが、全面的に間違っているわけではなく、日本という国の男女平等さが他国と比較して低水準であることは間違いないと思います。
いまでも行われていますが、女性活躍推進のために
- 数値目標を設定することを企業に義務付け
- 男女の評価に偏りが生じないように監視する
- 管理職員の女性の割合を公表する
- セクハラ・パワハラの相談窓口を設定
- 採用時における男女別の競争倍率
数十個ある取り組みの中から数個だけ抜粋して記載してみましたが、問題の本質をとらえずに、その場しのぎで騙そうとする低レベルな取り組みばかりで嫌になってきますね。
女性活躍推進の問題をテーマとして与えられたが、果たして何が問題なのか。

女性活躍推進の対策について考えてくださいとのことですが、何が問題なのでしょうか?

女性が活躍できていないことが問題です!

ん???
女性が活躍できていないとのことですが、逆に女性が活躍できている状態とはどういう状態を指すのでしょうか?

男性と同じように政界で進出していたり、企業においても管理職員の割合が同程度になる状態であれば、女性活躍が出来ている状態といえるのではないでしょうか?

・・・なるほど。女性が経済社会においてある程度の主導権を握って活動できている状態を達成するためにできることについて考えるのか・・・。
女性活躍推進は意外と根が深い問題であった
そんな講師との不毛なやり取りを経て、いろいろと考え方を整理していきました。
講師のいう女性が活躍できている状態が達成できていないことは、
- 女性にそういった機会が与えられていない
- そういう場に行こうと思う女性が出てこない
- 女性が抱える家事や家庭でのことを考えれば、社会で活躍しようと思わないのは当然
- 女性が活躍したいと思える場を用意する責任がある
- そもそも適正な評価を受けていないと思う
- 女は愛嬌、お茶くみだけしてろと言われる
- 女性が就ける管理職の席がない
そんな問題があるのでは?と講師や、その場にいた研修生から意見が出されました。

・・・それらは問題の幹から派生に派生を重ねた枝先の問題に過ぎないのでは?もう少し掘り下げて考えなければ、誰か一人にだけ都合のいい取り組みになってしまう・・・。
いや、だれか一人にだけ都合のいい取り組みであったとしても、人の変化に伴って、数人の助けにはなるのかもしれないから、悪くないのかな・・・。
例えば、女性専用の管理職の席を用意したところで、その瞬間には管理職の女性割合が増えるかもしれませんが、適正があるか無いかに関わらず、席だけを用意することは本質的ではありませんよね。
では、管理職員としての適性を高めていくための研修を重ねることにより、適正のある人材を育てていくという対策に取り組んだところで、その管理職員の席が魅力あるものでなければ、能力のある女性よりも、金銭的なものや権力的なものだけを目的としているような女性しか目指さない席となってしまいますよね。
若干の偏見が入っているかもしれませんが、男女関係なく、ある程度大きな企業においては、能力のある人ほど出世のためには働かないという印象がありますね。出世のためというよりも、自分自身が満足できて、恥のない仕事を信念をもって丁寧に仕事をしている印象があります。
つまり、企業側が「女性専用の出世ポジションありますよ~!!」なんて言ったところで、逆効果じゃないかってことですね。
アンケートやヒアリングを進めていく中で、分かってきたことは、仕事上で頑張ったところで相応の見返りがある気がしないし、女性ということだけで同年代の男性社員が話を聞いていない気がするとかいう意見が見られました。
他にも、晩婚化が進む中で、結婚出産育児のことを考えると、積極的にプロジェクトにかかわってしまうと、その後迷惑をかけてしまうかもしれないと思い、積極的に発言できない。
一生懸命働いて、男性社員以上の結果を出したところで、女性というだけで評価に偏りがある気がするし、子供が熱を出して急遽休んだりするだけで評価が下がる。ただ出勤しているだけで、何もしていない男性社員と同じ評価となるのであれば、頑張っても無駄という感じになってしまう。
女性活躍推進という概念的な問題に対してたくさんの枝葉に副次的な問題がぶら下がっており、一見すると目がくらみそうになり、枝葉についた問題が本質的な問題であるかのように勘違いしてしまいます。
冷静になって分析を進めれば、それらの問題が枝葉についた鬱陶しい問題に騙されることは無いのですが、こういった問題はとかくヒステリーになりやすく、本質に目が届かないことも少なくありません。
枝葉の問題を集めて分析していくと、「適正に評価されていない」「出産育児を理由に職場を抜ける可能性があるため、積極的になれない」「いるだけおじさんが許せない」「継続出勤により経緯を詳細に把握できることでマウントを取られるため、そいつらと横並びしたくない」なんて不満が隠れていることがわかりました。
考えを整理していくと、職場における人事評価方法、昇進出世基準になっとくしていないこととを改善できればよさそうです。
「出産育児を理由に職場を抜ける可能性があるため、積極的になれない」というフラストレーションも、職場を抜けないことが評価基準と昇進出世基準にあるという点に不満をもっていることに繋がっている側面も大きいと思いました。
すると気が付いたことがあります。
同じ不満を持っている男性社員も多くいる!ってことです。
同じ不満を持っている男性職員については、プロジェクトにおいて、どんなに頑張っても自分が生み出した成果の分すらも評価されていない。口しか出さない仕事のできない先輩上司のしりぬぐいをしながら、最高の結果を出したにも関わらず、結果の分も評価されない!なんて思っていることが多いんです。
デジタル化の急速な浸透により、うかうかしていると数年で社会のデジタル化についていけなくなります。そんななか、若手から不満に思われている人は少なくないと思います。そんな人たちが若手の評価をし始めるので、更なる不満が増していきます。
ここで気が付いたことがありました。
女性活躍推進問題ですら枝葉であった!ってことです。
問題の根幹は会社の人事的な構造そのものにあり、やる気実力ともにあり結果を出している人が適切に評価をされることがなく、休まずにその場に居続けるだけであったり、雰囲気を出せる人が評価をされる状況を改善することが必要であるという結論にたどり着きました。
やっかいなことに、人事からすると、その問題を放置した方が会社がスムーズに回るから放置していたりするんです。つまり、女性活躍の問題を放置はしないが、解決もしないというアホな政治家みたいな活動を始めたりするんですね。
男性育休取得推進が簡単で結果を出しやすい

男性の育休が浸透するとどうなるか。
デジタル化に馴染んでいるうえに、会社独自のシステムもある程度使いこなす世代というと、入社から5から10年くらいでしょうか?だいたい27から32歳くらいですかね。
その世代の男性が育児休業を取得し、長期で職場を離れるとなれば、その上の世代は前のシステムに慣れた人たちだし、下の世代はまだ慣れていないし、もっと便利なシステムがあるのを知っている。
世代間を繋いでくれていた主戦力が抜けるんです。会社としては痛手です!ではないんです。
その状況に対応できるような業務フローが出来ていないことが問題なんです。システムの入れ替えが適切ではないし、変なカスタマイズにより新人的には非常に使いにくいシステムになっている。そんな状況を放置した人たちの責任なんですよね。
そんな問題に気が付いていない人たちがあまりにも多いので、不満が増えていろいろな問題が発生するんです。
気が付けよ!といったところで無駄なことですね。人事もグルであることが多いですから。グルじゃない場合でも、人事評価でいかようにもできてしまう。そんな状況です。
ではどうするか。
男性の育児休業取得促進です。
会社としての基礎体力の弱い部分が簡単にわかってくる。一部の社員に頼り切っていた主要部門なんで、その社員が引き抜きされてしまえば、会社ごと沈没しかねません。
働き盛りである30歳前後の職員を長期で休ませることが出来れば、会社としての基礎体力は大幅に向上するとともに、男女差のない状態で各ポジションを用意することができるようになります。