家は自分でデザインするものと思っていた
自分の両親は、親族から贈与された土地に注文住宅を建てました。デザイナー物件とかではなく、普通の家を建てました。
そんな両親の建てた家で育った自分であったので、家は当然注文住宅で、デザインするものと思っていました。
- 趣味の道具やベビーカーなどの子供グッズを収納するために、玄関の横には土間収納が欲しい。
- すべての居室にウォークインクローゼットが欲しい。多少部屋が狭くても構わないので、収納スペースと居住スペースが分かれるようにしたい。
- 浴室の前室(脱衣所)と洗面室を分けたい。
- 洗濯機置き場は2階に欲しい。
- 洗濯室そのものかその横にサンルームが欲しい。
- 駐車スペースはドアが全開放できるようにしたい。
- キッチン脇にパントリーが欲しい。
- ゴミ袋の一時保管場所が欲しい。
- 玄関わきに手洗い場所が欲しい。
- リビングで安心して仕事ができ、リビングで遊ぶ子供が見えるようにしたい。
なんて、家が建てられたらいいなと思っていました。
建売住宅でこれら全てを満たしている物件はなかなか見つかりません。全国中を探せばあるかもしれませんが、これらの間取り・設備の条件よりも、立地の条件を優先する必要があるため、探すエリアは限られています。
どんなに建物の条件が良くても、例えば長野の山奥で最寄りのスーパーまで2時間かかるようなところには住めませんからね。
建売住宅を土地代と建物代に分割した場合の建物代と、注文住宅の建物代には、大幅な差はありません。工務店もハウスメーカーも、建築に使う材料や職人にかかる人件費を詳細に積算して見積もりを出すことができないため、過去の実績などから、だいたい1平米あたりいくらかかるかという平米単価を元にして見積もりをしています。
そのため、間取りが多少変更になろうと、建築面積の平米数が変わらなければ大幅な金額差はないです。
とはいえ、注文住宅の方が金額が高くなります。ハウスメーカーによっては、使用している木材や外壁材などの単価が著しく上がるため、平米単価で数倍から十数倍になることもあります。
注文住宅はかなりコスパが悪い
主に間取りにこだわりがあったとしても、建物にかかる費用に大幅な差は生じない中、注文住宅のコスパが悪くなるのは、土地代がかなり割高だからです。
建築条件付きの土地と、建築条件の無い土地の価格差を調べてみてください。
当たり前ですが、同じ場所は別条件で売り出されることは無いため、だいたい条件が同程度のところを探すしかありません。
建築条件付きの土地というのは、若干土地の値段が安くなっているが、指定された住宅メーカーで家を建てる必要がある土地のことです。
逆に建築条件のない土地は、土地の購入後に好きなハウスメーカーを自分で選び、家を建てることが出来る土地のことです。
建築条件付きの土地が安いのは、その後の建築契約まで約束されているため、土地分の利益を先送りし、建築契約の費用に上乗せされるのであろうというのは、半分正解で半分間違いです。
切り口が若干違います。
土地の仕入れのフローを考える必要があります。
土地は洋服のように縫って作り出せるものではなく、決まった量しか地球上にはありませんので、不動産会社はハウスメーカー、または個人は、既に誰かの所有物である土地を買い取る必要があります。
ハウスメーカー等が買い取るのであれば、ある程度大規模な土地も買い取ることが出来ます。例えば、家3軒建てられるくらいの土地を買い取って、ばら売りすることも可能です。
それに対して個人で買い取るとなると、必要な分だけをばら売りしてもらうことは困難であるため、条件に見合った土地を探す必要があります。
つまり、ハウスメーカーなどは積極的に買収に動けるものの、個人では積極的な土地購入は難しいため、市場に流通するのを待つしかありません。
積極的な買収となれば、金額の交渉も可能です。休耕地や空き家となった母屋などを一括して仕入れて、値段交渉により割安に手に入れることが出来ます。
これらをすべて比較すると、
- 建売分譲宅の土地代 ✖ 1.2~1.4 = 建築条件付き土地代
- 建築条件付き土地代 ✖ 1.3~1.7 = 建築条件なし土地代
このくらいの価格差がある印象です。
この計算だと、建築条件なしのフリーの土地代は、建売分譲住宅の土地代の約2倍くらいの値段で流通している感じになります。
ただし、建売分譲住宅は交通の便が悪いような人気ではない土地で売り出されることは少ないため、そのような土地でも全く問題ないという考えの人であれば、土地の値段が半額程度まで落ちるので、駅まで徒歩5分の土地と駅まで車で15分の土地で同じ価格くらいになることでしょう。
このように、注文住宅は土地の値段が大幅上がるために、全体の費用も高くなります。
話を分かりやすくするために、注文住宅と建売住宅の費用を仮に置きたいと思います。建築場所は同じ場所とします。建物のスペックはほぼ同じで、主にまどりに拘ったとします。
- 注文住宅4300万円 内訳:建物費用2300万円 + 土地費用2000万円
- 建売住宅3300万円 内訳:建物費用2100万円 + 土地費用1200万円
先に挙げた拘り条件のための費用だと考えればOKかもしれませんが、コスパで考えれば割高かと思います。
その拘りは絶対に必要か考えた
さきに挙げた拘り条件について、絶対に必要かを考えました。
殆どの条件については、なくても支障はありません。「これがあったら少し便利だな♪快適だな♪」程度の差しかありません。
この程度の条件のために、上記で仮定した差額1000万円の価値があるか?ってことです。
1000万円です。
地域にこだわりがないため、土地の値段をがっつり下げれば、同じ金額でその便利さ快適さを享受できるかもしれませんが、仮定や変数が増えすぎるとややこしくなるので、今回はこの差額1000万円で話を進めます。
個人的にはそこに1000万円の価値を見出せませんでした。1000万円を節約したと考えれば、多少の不便さは甘んじて受け入れられます。
絶対に譲れない条件であれば、リフォームや家具の購入で対応できるし、1000万円もかからずにできることでしょう。
建売をリフォームした方が総額が安くなる場合もある
拘り条件の中で、絶対に譲れない「玄関わきに手洗い場所が欲しい」について、複数のリフォーム会社に見積もりを貰いました。
設置する設備のスペックにもよりますが、すごく安いもので良ければ、だいたい40万円くらいから作れそうでした。ただ、実際には頼みませんでした。
そうです。40万円です。
理想の条件から現実に落とし込んでいき、絶対に譲れない条件を残し、その部分だけはリフォームで対応する方が、トータル費用は低く抑えられることでしょう。
建売分譲住宅にしてよかったところ
建売分譲住宅であっても、家具の配置や、新しく買う家具そのもの、カーテンの色、などなど選んで決めなければならないことがたくさんあります。
夫婦で話し合って決めるのですが、それぞれが拘るポイントが違うため、多少揉めます。こっちの色がいいとか、もっと安いやつで十分だろうとか。挙げればきりがありません。
もしもこれが注文住宅であったと考えるとぞっとします。
キッチンの種類や壁紙、外壁、屋根、ドアの開閉方向、トイレの種類、向き、窓の大きさなどなど決めることは無限と言っていいほど多いです。これだけのことを夫婦で話して決めていたら、まいにち殴り合いになってしまいそうです。
妻または夫が一人で決めてしまえば、入居後に文句を言われるだろうし、事前に話し合おうにも、まだない家での暮らしのイメージが異なるため、意識の共有は不可能に近いです。
そう考えると、決めることが少ない建売住宅の方が平和だったと思います。
ちゃんちゃん。